「麻」と「人間」のおつきあい

京都麻業株式会社
麻の館「麻小路」館長

小泉 光太郎



「麻」よもやまばなし

「魔除けの麻,幸せを呼ぶ麻」

古来から「麻」は神聖なるものとして取扱われてきました。今は、昔、天上より「麻の草木」を伝って神々、神仏がこの地上の降り立たれたとされ、今日でも神社、社寺、仏閣でも、魔除け、厄除け,おはらい等に種々用いられております。特に魔除けとして縁起物にはよく使われます。「麻」の育成がすばらしく速く、その成長が発展、拡大にもつながり大きく根を張ることも含めて、商売繁昌、事業発展、子孫繁栄にも根を張るとして、縁起物で重宝されております。事ある毎に「麻」にふれる機会の多い人ほど、幸せであると云われております。





「麻」の性質

 最近は、様々な性質の化学繊維が出てきて,色々なところに進出していますが、では「麻」は一体どんな性質で、どんな所で使われているのでしょうか

 例えば、こんな「麻」があります。皆さんが「麻」に触れるとき。子供の頃、運動会で力いっぱい引っ張ったあの綱引きの綱。あれが「マニラ麻」と呼ばれる「硬質性」の麻で作られています。また、その熱気の中で一生懸命応援してくれた両親の額に噴き出す汗を拭き取ってくれた純白のハンカチ。これが「軟質性」の麻である「リネン(亜麻)」や「ラミー(苧麻)」でできているのです

他にもお正月、初詣に行った神社で鈴縄を振り鳴らしお願い事をする、その鈴縄は「大麻」であり「軟質性」の麻なのです。

 様々な植物から作られる「麻」は当然様々な性質を持ち、その特長を生かした様々な製品に生まれ変わります。しかし、どんな「麻」も植物であり、植物繊維です。糸になっても生きていたときのように水を吸い、空気を呼吸しています。そしてそのことが、汗を吸い、蒸発させて、いつもさらさらとして、ひんやりと感じる  「麻」のイメージを造っていくのです。





大麻     マニラ麻   サイザル麻
     
           亜麻      苧麻      黄麻



「麻」の魅力

 古代布とか、粗布、また荒布ともいわれて古代から私たち「人間」と共に、それぞれの国々において、それぞれの地方において育成し、歴史を持ち、文化にも、産業にも、宗教のまつりごとにも関係し、そして何より生活を中心としたつながりで深く関わりあっているのが「麻」なのです。

 いま日本で「麻」といえばいったい何を思い浮かべるでしょう。人によって実に様々な答えが返ってくるのでしょうが、きっと満点の答えを返せる人はほどんどいないでしょう。それは「麻」がどんな風に生活の中で利用されているのかということが一般にはあまり知られていないからです。

 例えば、夏のものとして、涼しさを求めるものとして思い浮かべられることが一番多いでしょう。涼しさ,さわやかさを好まれて,ハンカチーフ、ワイシャツ、ブラウス、スーツ、着物、浴衣。あるいはその雰囲気で、暖簾やタピストリー、小物やバックといったものに利用されている。普通の人はそんなことを思い浮かべるでしょう。もしかしたら、「麻薬」を思い浮かべる人もいるかも知れません。「大麻」や「マリファナ」。ただし、こういった麻の使い方は思い浮かべるだけにしてくださいね。

 さて、私は科学者ではありません。ですから、「麻」については、それを生業にする者としての目で、ちょっと面白いお話をしたいと思います。

「麻」と「日本人」

 日本人について、実に様々な調査が行われていますが、その中で日本人の好むイメージというものを調査したものがあります。「清潔さ」「自然な」「さわやかな」。日本では実に多種多様な分野の中に麻は入り込んで、様々な製品になっているのですが、それがあまりに多いため、「この製品の麻については知っている」という人はいるものの、どんな「麻」も取り扱っているというところはありません。私はそんな「麻」と付き合っていくうちに次第にこの素材に惚れ込んでいきました。そして、麻の館「麻小路」を開くに至りました。数え切れない表情を持つ様々な 「麻」に触れられる場所として、麻100%の物のみを取り扱い、その麻の生涯をお互いに語り合い、自然に触れられる場所でありたいと思います。

「麻」のことなら何でもわかる「麻小路」今回はほんのさわりで失礼します。



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