最近、扇も若者に携えられるグッズとして注目を浴びていますが、これはあおいで涼をとるためというより、むしろコミュニケーショングッズ的な使われ方をしています。つまり扇に書かれた図柄が自己表現の小道具として用いられるわけです。
もともと扇は、木簡から派生したように、ものを書くために生まれてきたわけですから、いつの世にも表現の道具とされるのは、当然のことかもしれません。
案外知られていないのが、扇は数少ない我が国創出の品物、だということです。日本の扇が平安時代に中国に渡り、その後16世紀頃ヨーロッパに伝わって宮廷社会を彩ったとされています。
私の店でも、外国人観光客が毎日のように訪れます。扇は日本的なイメージが高いとの評価を受けてとても人気があります。よく、扇の中にその時代、その社会の文化が圧縮されていると云われますが、まさに外国人も同じ目で見ているのかもしれません。
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ところで、扇の使い方についてちょっと覚えておいていただきたいことがあります。
それは開閉の仕方についてですが、
新しい扇は新車と同じだということです。
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つまり車も慣らし運転期間中は丁寧にゆっくりと動かすように、扇も新しい間は紙の折り目や竹扇骨のすれ具合が馴染んでなくて、ギクシャクしているので、丁寧に両手を使って開閉して欲しいということです。これを守るかどうかで長持ちの具合が相当変わってきます。また竹の艶や手に持つ感触がシックリしてくるわけです。
20年前、京都に修学旅行で来て買って帰られた中年のご婦人が、いまだに当時の扇をもって来店されることがしばしばあります。大事に使われていたんだなあと涙の出る想いがします。紙も竹も自然の生き物といえますから使い込んでいくうちにその人のクセに馴染んでいくわけです。
そしていつまでも愛着をもって大事に使っていただくことこそ伝統工芸品の価値があると存じます。 |