11月の料理 「家庭で焼き求道」




〜求道技術伝授・その六 「家庭で焼き求道」 の巻〜

こんにちは、求道料理人清水でございます。

さて、今回は家庭で焼物をと思っておりますが、なかなかご家庭では焼物は難しいかと存じます。
料理屋のように焼台があれば串刺して乗せるだけで、焦げないよう、焼きすぎないようにだけ気をつけていればいいのですが、ご家庭ではオーブンや魚焼き器・網、などが主流かと思います。
こういったものを使っての焼物は料理人でも難しいものです。

そこで、今回はフライパンを使い、これからの季節の焼物の王者
「ぶりの照り焼き」 をご紹介したいと思います。

さて、11月といえば京都は観光シーズン真っ只中。

10月中盤から徐々に人出が増えてまいります。
その10月中盤の22日には京の三大祭のひとつ「時代祭」が今年も行われました。
時代祭とは明治維新から延暦時代へ、新しい時代から古い時代へと繰り広げられる一大時代絵巻で、京都御所から平安神宮まで練り歩くお祭り ですが、その起源はそれほど古いわけではなく 平安遷都1100年にあたる明治28年3月に桓武天皇を祭神とする平安神宮が創建され、その祭りを盛大に行おうと、京都が都であった時代の風俗の変遷を表現する時代行列が提案され、その第1回が同年10月25日に挙行されました。
初回の行列は、創建された平安神宮へお参りする姿として行われましたが、その後は桓武天皇と孝明天皇の祭神二柱の神霊が京都御所から市内を巡行して、市内の繁栄をご覧になるという姿に変わり、この神幸列にお供をするという現在のような時代行列の姿となりました。
翌年から桓武天皇の車駕が新都に入った日とされる10月22日に改められ、それ以来時代祭りは10月22日と定められたのです。

この時代祭には神様の供物を供える神主の役『神饌講社列』として毎年料理組合から15名ほどが出ます。
烏帽子に白装束という格好で市内を練り歩きます。
朝8時に平安神宮に集合し装束に着替え、御所まで巡行した後休憩し、井山氏のお店謹製のお弁当を食べて、1時ごろ出発し、巡幸して夕方平安神宮に戻り、普通の人はそこで解散なんですが、私どもは神の使いですので桓武天皇と孝明天皇の祭神二柱の神霊が神殿の奥深くにお帰りになる儀式まで続き、終わるのは6時ごろです。
そしてその後打ち上げがあるので家に帰れるのは8時を過ぎます。

すんごく疲れます。

ただ平安神宮の社殿の奥に入ることは一般人には叶わぬことですので、貴重な経験になります。
雅楽が鳴り響いている中(もちろん生)、かがり火を焚き、厳かに儀式は行われます。
そして神が戻ってこられる時は薄紫の幕が通り道に覆いとされ、私らにもその姿を見ることは叶いません。
そして無事お戻りになって、祭りは終わりとなります。

私も過去に2度参加いたしましたが2度目の時はとんでもない思い出があります。

昼の休憩の時にいつも上役の人が喫茶店に連れて行ってくださるのですが、不覚にもアイスコーヒーを飲み悲劇に見舞われる事になりました。
もうお分かりかと思いますが、そう、巡行中にトイレに行きたくなったのです。
1時間近くは辛抱したのですが、後800メートルという所でもうどうにもたまらず、とにかく普通に歩けないぐらいにもよおしてきて、内股のそそ歩きのような状態で

と、おもむろに目に入った食堂に駆け込み、
「ト、ト、トイレお借りできますでしょうか?」 と食堂のご亭主らしき方に言いますとびっくりしたような顔をされたので あっそういえばこんな格好したのが突然入ってきたら誰でもびっくりするわな と思いつつも 「どうぞ」 といわれると一目散にトイレに走っていき扉を開けて入ろうと思ったら、烏帽子が入り口にひっかかってずり 落ちたんですけど、かまわず、ずかずかと入りもうひとつの扉を開けてGOーと思いきや、なんと取っ手のところに 「赤」 のマークが・・・
「がーん」 と冷や汗がたらーりとしだすと「じゃー」と水を流す音が聞こえたのでしめたと思い、 「赤」 のマークが 「青」 に変わるや否や、恐らくF1のスタートであれば私が一番反応が速かったはずであり、まぁあまり的を射ていない例えではありますが、とにかくそれほど素早くという意味で、思いっきり扉を引っ張ると、おばさまが取っ手につかまったまま転がり出てこられて、私の烏帽子がずり落ちた神官姿を見て驚愕の眼で 「うゎー」 と叫ばれたのですが、生憎どうのこうのと説明する余裕が無くかまわずトイレの中に入り 「よしもう大丈夫!」 とほほが緩んだのもつかの間、

「この装束には社会の窓がな〜〜〜いっ!」
「あ゛ーーー、神様ー」
と神官姿の私がそう思うのもおかしな感じですがとにかく絶叫したい気分でした。
落ち着け、落ち着けとぶつぶつ言いながら、なんとかいくつかの紐をはずし窓を確保し、用を済ますことが出来たのですが、ほんとに落ち着くと 「やばい!うちらの列はどの辺まで進んでんにゃろ?」 とあせりだし、お礼もそこそこに道路に走り出しました。
そして学生時代陸上で鍛えた足を今こそ見せるべき!と、神官は恐ろしいスピードで走り出したのです。しかも雪駄で。
当然注目の的で、声援など飛んでおりましたがかまわず走り、どうにか平安神宮の大鳥居の前で、列に追いつくことが出来き事なきを得たのですが、そうしてほっこりすると先ほどの食堂のご亭主にもっと丁寧にお礼を言うべきだったという後悔が始まり、結局次の日菓子折り持って御礼に行きました。
アイスコーヒー一杯がもたらした地獄の巡行でした。
あっ、前に神官が走ってたの見たことある!という幸運なお方はお便りくださいませ。


(用意の材料) 2人前

ぶりの切り身 2切  約200g
↓調味料↓
濃口しょうゆ 大さじ  6杯
みりん 大さじ  3杯
砂糖 大さじ  3杯
サラダ油 少々


(調理手順)
  1. まず調味料、濃口しょうゆ、みりん、砂糖を分量分混ぜ合わせビニール袋に入れて、そこにぶりの切り身を30分漬け込みます。

  2. 漬かったら、ビニール袋内のタレはボールに取り置きしておいてぶりの汁気はキッチンペーパー等でよく拭きとっておきます。

  3. フライパンを軽く熱し、薄く油を引いて、ぶりの切り身を盛り付けたときに上に来る面から先に焼いていきます。
    火の強さは中火よりやや弱く、じっくり焼き上げます。

  4. 表面がこんがり焼けたら裏面にかえしこちらも中火よりやや弱い火で焼きます。裏面の方は若干長い時間焼いてください。

  5. 焼き上がりましたら、フライパンを傾けて、余分な油分をキッチンペーパー等で吸い取ってください。
    そしてボールに取り置きしてあるタレをかけ強火で一気に焚き上げます。
    お玉でタレをすくい、ぶりの表面にかけながら煮詰めていきますとよい照りが出ます。

  6. タレが半分ほどになれば出来上がりです。

もしもぶりに火が通りきってなかったら・・・表面は焼けているのに中が・・・
ちゅう場合はぶりのみ15秒〜20秒ほど電子レンジにかけて、その後にタレをかけお召しあがりください。



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五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫