5月 京都の旬 おうちで簡単!「賀茂なすの田楽」


京料理 割烹 三栄



〜求道技術伝授・その四 「きぃ〜るっ!」 の巻〜

皆様こんにちは。今年の梅雨はどんなんでっしゃろ?
この原稿を書いている現在は梅雨入りしたものの全く雨が降っていませんのでなんとも書きようがなく・・・。

今回はご家庭で当然包丁はお使いになっておられるかと思うのですが、 「切る」 についてあれこれ。
まず初っ端から自慢しまくりますが、私実は料理の道に足を踏み入れてからただの一度も包丁で手を切ったことがありません。
えっ? そりゃ仕事してないからやろ って・・・何をおっしゃいますお客様、ちゃんと日々仕事に精進しております。
で、恐らく日本全国の料理人幾知れずですが、そんな人いないのではないでしょうか?
おられても数名ではと自負しております。
料理修業のときに 「絶対手ぇ切らへん!」 と豪語していた私に料理長が
「絶対、手ぇ切る。賭けてもいい。また切らないと上手くならない」
と言われましたが、とうとう修行3年の間一度も切りませんでした。
「ほんまに切らへんだな、わしゃ何百人と料理人見てきたけどそんなん初めてや」
と驚かれました。
そしてその後現在に至るまでも一度も切っておりません。
なぜ切らないのか?
「一刀入魂!」 で、ございます。
包丁一振り一振りに魂を込めておれば・・・
ちゅうのは大げさですが包丁を使う時に包丁の先っぽに意識を集中させると包丁は自分の指のような感覚になります。
決して思ったところ以外には動きません。
手を切る時というのは思ったよりも包丁が切れた時やすっぽ抜けた時、思うように包丁をコントロールできなかった時に切るので、いかに包丁を コントロールするか、自分の指先のように自在に動かすかということが肝要になってくるのです。
指で鼻ほじくったろと思い指突っ込んだら耳の穴やったなんて方はいらっしゃらないと思います。
つまり指のようにコントロールできるとおのずと包丁が自分の意とする場所以外には動かなくなります。
まぁそれにはまず慣れでしょうが、どんなに慣れた人でも切る人は何度でも切ります。
私が思うに気が抜けているか、包丁を意識する箇所が悪いと思っています。
まぁあくまで私見であり絶対とは言えませんのであしからず。
しかし、 ただの一度も手を切ったことのない人間が言っていることですので
・・・ふ・ふ・ふ・・・(説得力あり!) まぁ物は試し、そういう意識を持って使ってみてください。


ちなみに・・・私包丁使っている時は絶対手を切らないのですが、包丁を置いてその近辺をタオルで拭いたりするときに引っ掛けてプチッと小指に突き刺したりします
・・・が・・・抜けてるんでしょうね。
また突き刺すと痛いのなんの。


次にきれいに切るということですが、詰まるところどれだけ包丁を動かす長さを稼げるかなのです。
試しにマッチ箱ぐらいの大きさの大根を用意し普通に縦でも横でも結構ですので切ってみてください。
次に、先から切りだして手元までかけて切るつもりですぅーと長く滑らしながら切ってみてください。
明らかに断面のツヤが違うはずです。
大根のケンなどを刻む時もたくさん滑らして切ったものと押し切りしたような感じで切った物では仕上がりのキラキラ感が違います。

また皮を剥いたりする時でも同じことが言え、押す力を強くかけながら強引に皮を剥くと切れが悪く妙に力が入って、スポッと抜けて手を切るということが素人さんによくある事例です。

剥く時も前後に包丁を動かし滑らしながら剥くと切れもよく妙な力は入りません。
よって手を切ることもありません。

普段のお料理の場面に切るという行為は欠かせないものであり、ちょっとしたコツで思いのほかきれいな仕上がりになりますので、是非練習してくださいませ。
ただ、例えば包丁でかぼちゃなどの固いものを半分に割ったりするときは押し切りの方がいいかと思います。
滑らして切ろうと思っても固すぎるものは逆に技術を要するので、手を切らないように注意しながら押し切りでガツンと切るほうがよいでしょう。



今月から恒例のミステリーコーナーが始りますので、私が体験した包丁にまつわる不思議な事件をご紹介します。

包丁にも妖刀というものがあるのかないのか存じ上げませんが、修行中、料理長は特注の包丁を使っておられました。
その包丁は出刃のような形をしているのですが厚みが薄く、柳刃のように長く、牛刀のような形をしていながら片刃で、まぁこんな説明しても なんのこっちゃとお思いになるでしょうがとにかく変わった包丁を使っておられました。
その包丁、勝手に触るとどつかれるのですが、一度こっそり使ってみたところ、その切れ味といったら鳥肌が立つような冴えで、石でも切れるんちゃうかと思うような妖刀でありました。
またその料理長が使っておられると生き物のように包丁に躍動感があり気色の悪いぐらい、正に 妖刀
そしてその料理長曰く、 「包丁はこまめに手入れを欠かさず、研ぐときにも魂を込めて研ぐと硬くなる・・・絶対熱を加えたらあかん・・・」 というような事をぼそぼそっと教えていただき、マイ包丁に魂を込めるべく研ぎ、手入れして2年の月日が経ちました。
「マンゴーを縦に真っ二つに割って包丁が欠けへんだら一丁前や。」
と料理長が言っておられ、現に料理長は妖刀でスパっーと真っ二つに割っておられました。
マンゴーはご存知のように真ん中にでっかい種があり、その種の固さといえば尋常ではないのですが、それをさらに縦に割るというしかも周りの果肉をつぶしたりしないよう、それこそスパっーと切らねばなりません。

そろそろマイ包丁も妖刀になりつつあるのではと確信を抱き始めていたのでマンゴー縦切りに挑戦したのでありましたぁ!

ガツンッ! 残念!種切れず! 大事なマイ包丁が欠けたぁ! ぎぃりー!

この事で二度と固いものはマイ包丁では切らずにおこうと誓った求道料理人清水でございます。

その後どういう訳か他人の包丁がしかも後輩の包丁ばかりがいつの間にか欠けている!
本人には覚えがない!という奇怪な事件が続けて起こったのでありましたぁ!


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(用意の材料) 4人分

賀茂なす又は丸なす2個
白味噌300g
砂糖40g
100cc
サラダ油大さじ 1×2
今回使用した白味噌は京都石野味噌の吟醸白味噌です。
使用される白味噌によって多少砂糖の量が前後するかと思います。
味見されながらお好みの量を入れて下さい。


(調理手順)
  1. まず白味噌、酒を上記の分量ぶん鍋に入れよく混ぜ合わせ、次に砂糖を分量ぶん入れかき混ぜ中火で火をつけます。

  2. しゃもじでかき混ぜながら焦げ付かないように練っていきます。
    ぷつぷつと沸騰してきたら弱火にし、約10分練りこみます。

  3. 水あめみたいな感じでとろっーとしたら出来上がりで冷ましておきます。

  4. 賀茂なすは1個を4枚のスライスに輪切りし、アクがうかないよう水につけます。
    水気をとりフライパンで焼くのですが2回に分けて焼きましょう。

  5. 油大さじ1を引いてフライパンで中火にて焼きます。
    片面が焼きあがり裏返した時に再度大さじ1の油を入れます。
    そして裏返した茄子をお箸で適当にブスブスと穴を開けておきますと中まで早く柔らかくなります。
    両面焼き上がり、箸で真ん中を指してすぅーと刺せれば出来上がりです。

  6. お皿に盛り付け、味噌も器に移してお好みの量をつけながらお召し上がりください。



余った味噌は冷蔵庫で保管されれば1ヶ月は保存できます。

賀茂なすの旬に何度か田楽をお楽しみください。

五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫







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