5月 京都の旬 「鯛の子のたいたん」



京料理 割烹 三栄



〜調理における求道のコツ・その参〜

こんにちは、ゴールデンウィークのさなか、皆様いかがお過ごしでしょうか。
京都は春の桜シーズンに続いての観光期、大変な賑わいでございます。
私ども京の料理屋は皆様のバカンスの折には休む閑も無いという、しがない商売でございます。
ですから閑散期を利用し休みを取るわけですが本年も3月の前半の閑散期に料理組合で「火の国熊本」へ研修旅行に行ってまいりました。
もちろんスパーク井山氏とも一緒でございます。

熊本空港からレンタカーを利用し天草方面へ「地魚のおいしいのん」を求め三角町(みすみちょう)という港町を訪問いたしました。
その町の料理屋さんにあらかじめ「新鮮な魚のお造りを多めに食べたいのですが」と4名で予約しておきましたところ 「誰が10人言うたんや」 ちゅうほど魚魚魚・・・魚を食べーると♪と歌いだしてしまいそうなほど出てまいりました。
恐る恐る 「あのー、この量はこちらでは普通ぐらいなんでしょうか?」 と尋ねると
「そうですねー、まぁ普通?・・・ちょっと少ないですかね」 と、信じられぬ量と種類で、お造りばかり食べるとあごが痛くなるちゅうことを初めて知りました。

やっと完食!

と思いきや、さぁーこれからお料理・・・。
酢の物、お吸い物、おこぜの唐揚げ一匹づつ、鯛の姿煮一匹づつ、その煮汁で、そうめん八束分ほど・・・
うっ!
まだ何か来るのかしら?
きっと来る♪ きっと来る♪
ちゅう感じでその時は貞子が来るより、料理が来る方が怖かった。

「あのーまだ何かお料理来ますか?」 と仲居さんに聞くと
「あっ後、焼きこのしろ寿司二貫と果物ですね。」 (助かった、寿司二貫ならなんとかなりそう) と皆一様に安堵の色。

「井山君、もうあかん、そうめん食べて、どない考えても食べれん。後、寿司でいっぱいいっぱい」
「了解!えーい、いきまっせー
と、スパーク井山氏は残りというよりは半分ほどしか減っていないそうめんを一気にスパーク完食!
パチパチパチ!さすが京男!
「ふぅー!腹一杯やわ。もう寿司早よ来いひんかな、間あいたら食べれんようになるで、なぁ、ハハハ!」

と、笑った顔が冷凍マンモス!さぁー行こう!愛・地球博!!
じゃなくて、笑顔が凍りつきました、焼きこのしろ寿司の大きさを見て。
握りこぶしを楽々上回るような大きさ、それが二貫。
皆無言涙目になりながらも料理人としてもったいない事はできぬとばかりに完食。

時は移り夕食、いまだ昼の満腹感が抜けぬまま食事開始。
またもや魚魚・馬肉馬肉・・・と、その量たるや常人の感覚ではないと思い、たまらず仲居さんに、これまた恐縮しつつ
「あのーこれって異常に量が多くないですか?」
「そうですね、熊本では食べきれないほどお出しする習慣があるんです。
でないと、"こんだけか?"とお客さんに腹を読まれるのを嫌がるんですよ。
ですから皆さん食べきれない分は折に入れて持って帰られますよ。」

「ですよねー、ハハハ、食べきれなくてもいいんですか、よかった。」
と言いつつも、下向けないほど満腹となりました。
しかし夜の街にはGO!

時はさらに移り次の日の昼食、伊万里牛の焼肉を頂いたのですがコース料理になっており色々お料理が出た後、メインの牛肉を盛った皿が私の前に置かれました。
井山氏曰く 「清水さんしみっさん、僕、肉焼きましょか?」
「いやいや、いいよ、僕焼くわ。」 と言い終わるやいなや、それと同じ皿が各人の前にも運ばれてきました。
うっ!これひとり分の肉?
恐るべし熊本の量感覚!
最後まで涙目になり、熊本にはかなわぬと京男衆はすごすご帰ってまいりました。
やっぱ京男は"やわ"なんでしょうか?

皆様、過ぎたるは及ばざるが如し、であります。



さて、今回は生姜を使った焚き物。
生姜を千切りにし一緒に焚くことにより、素材が持っている臭みを消すことが出来ます。
まぁ新しい素材ならばそんなに気になるような臭みというものはないのですが、味のアクセントとしても生姜は欠かせない縁の下の力持ちと言えるでしょう。

・色々な魚の卵巣の焚き物
・鰯、鯖など背の青い魚の煮付け
・牛肉の時雨煮

などなど、生姜は重宝な調味用副素材です。


(用意する材料) 2人前

鯛の子(卵巣)1腹
土生姜1かけ
(調味料)
出汁200cc
大さじ 1
みりん 大さじ 1
薄口醤油大さじ 1
砂糖小さじ 1/td>
(作り方)
  1. まず、鯛の子を2センチほどの幅で切り分け、端の切り身は袋になっている部分を包丁で切り目を入れておく。

  2. 土生姜はできるだけ細い千切りにしさっと水で洗い、よくしぼっておく。

  3. 沸騰したお湯に[1]の鯛の子をそっと入れる。花が開いたように鯛の子が丸くなります。そしてそのまま約2分ほど湯がきます。

  4. そっとお湯を切り、水でさらします。

  5. 調味料の分量をきっちり量り、千切り生姜を入れて沸騰させます。

  6. 沸騰したら中火にし、[3]の鯛の子の水気を取り、そっと出汁の中に沈ませます。

  7. 約7、8分ほど煮含め、そのまま自然に冷まします。

  8. お召しあがりになる前に再度温めても結構ですし、そのまま召し上がられても結構です。お好みで。

焚き物のコツコレをクリック!→



ちょっとIN熊本のひとコマ。
場所は天草地方松島の千厳山展望台。

後姿で写るダンディーな男。すなわちスパーク井山氏でございます。
決して井山氏宙に浮いているわけではありません。崖の端っこに立って物思いにふける意外な一面。
後ろから「わっ!」とびっくりさせようかと思いましたが、スパークして崖から飛び出したら洒落にならぬので断念。
それで記念にショット。


それでは皆様素敵なゴールデンウィークを!

五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫







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