その23号来襲の翌々日の深夜、近所のスーパーにふら〜っと出かけたとお思いください。
大通りの交差点に荷台の商品を煌煌とライトで照らしている4トントラックが一台。
なんだろ?とついつい蛾のように明るいところに引き寄せられるわたし。
「あーリンゴ!」
と立ち止まったが最後、荷台の上でリンゴを仕分けする作業をしていたおじさんがいきなり飛び降りてきて
「△□○○××!」
と意味不明の怒号!そのおじさんの容姿は黄色の長袖Tシャツにオレンジのオーバーオールズボン、頭はスキンヘッドで透明のスポーツサングラス、つまり横から正面まですべて球形のレンズで覆われているサングラス。
「はぁ?なんですぅ?」
「安く△□、買っ○×」
「あー、安くしておくから買ってちょうだいな」
ちゅうことかとトラックにごてごて書いてある文字を見ると
「リンゴにさわるな!」「安い!」「風で落ちたものじゃない!」「青森直送」etc・・・。
「はぁはぁーんつまりリンゴが台風の風で落ちたので売りさばきに来てるのね、青森から」
ちゅうことが分かりました。
そしたらいきなりナイフが目の前に
「これ、風で落ちたリンゴ」
とよく見るとナイフの上にリンゴの切れ端。
「渋いやろー」
またナイフ。
「これ完熟」
ともう一切れ。確かに最初に渋いリンゴを食べたせいか、異常に甘く美味しく感じました。
「8個1000円で買って」
「うーん、どうしようかな」
「9個1000円にしておく」
「うーーーん、一個100円やったらなぁ安い感じやけどぅー」
その宇宙人のようないでたちのおじさんは落ちたリンゴの味2つ分のように・・・つまり渋々袋に10個入れてくれました。
しかし帰り際には
「あんがとね」
とスマイルしていただき値切って申し訳ないことしたという思いがちらっと頭をかすめた刹那、サングラスの奥の目が次の獲物を見つけたようで、
キラッ☆
と光りました。
後ろを振り向くと会社帰り一杯飲んでこれから帰宅っちゅう感じのサラリーマン男性が荷台を覗き込んでいました。
そして
「△□○○××!」
とまたおじさんの怒号。
このように夜は更けてゆく。
あのおじさん、結構商売上手なのかも・・・と思いつつも、台風被害に負けず頑張っておられる姿にたくましさを感じたある夜の話でした。
|