11月の素材 「カレイ」




〜白身魚の煮付け〜

先月の台風23号来襲により風水被害に遭われました皆様、また新潟中越地方の地震災害に遭われました皆様には心よりお見舞い申し上げます。
23号では京都市内も雨が降り続き、風も強く、当店は臨時休業とさせていただきました。 そしてなによりもその後、野菜の値段の急騰には慄くばかりでございます。

その23号来襲の翌々日の深夜、近所のスーパーにふら〜っと出かけたとお思いください。

大通りの交差点に荷台の商品を煌煌とライトで照らしている4トントラックが一台。
なんだろ?とついつい蛾のように明るいところに引き寄せられるわたし。
「あーリンゴ!」 と立ち止まったが最後、荷台の上でリンゴを仕分けする作業をしていたおじさんがいきなり飛び降りてきて 「△□○○××!」 と意味不明の怒号!そのおじさんの容姿は黄色の長袖Tシャツにオレンジのオーバーオールズボン、頭はスキンヘッドで透明のスポーツサングラス、つまり横から正面まですべて球形のレンズで覆われているサングラス。
「はぁ?なんですぅ?」
「安く△□、買っ○×」
「あー、安くしておくから買ってちょうだいな」 ちゅうことかとトラックにごてごて書いてある文字を見ると 「リンゴにさわるな!」「安い!」「風で落ちたものじゃない!」「青森直送」etc・・・。

「はぁはぁーんつまりリンゴが台風の風で落ちたので売りさばきに来てるのね、青森から」 ちゅうことが分かりました。
そしたらいきなりナイフが目の前に 「これ、風で落ちたリンゴ」 とよく見るとナイフの上にリンゴの切れ端。
「渋いやろー」 またナイフ。 「これ完熟」 ともう一切れ。確かに最初に渋いリンゴを食べたせいか、異常に甘く美味しく感じました。
「8個1000円で買って」
「うーん、どうしようかな」
「9個1000円にしておく」
「うーーーん、一個100円やったらなぁ安い感じやけどぅー」
その宇宙人のようないでたちのおじさんは落ちたリンゴの味2つ分のように・・・つまり渋々袋に10個入れてくれました。
しかし帰り際には 「あんがとね」 とスマイルしていただき値切って申し訳ないことしたという思いがちらっと頭をかすめた刹那、サングラスの奥の目が次の獲物を見つけたようで、 キラッ☆ と光りました。
後ろを振り向くと会社帰り一杯飲んでこれから帰宅っちゅう感じのサラリーマン男性が荷台を覗き込んでいました。
そして 「△□○○××!」 とまたおじさんの怒号。

このように夜は更けてゆく。
あのおじさん、結構商売上手なのかも・・・と思いつつも、台風被害に負けず頑張っておられる姿にたくましさを感じたある夜の話でした。



今回は秋の味覚でまだ取り上げてないもの「栗」と思ったのですが、栗は皮を剥くのが大変で包丁で怪我でもしていただくと困りますのでどうしようかぁと過去のレシピをつらつら見ていますと「煮付け」というものがないことに気づき、今回は秋の素材という訳ではありませんが 白身魚と焼き豆腐の簡単煮付け のご紹介にいたします。

(今回はエテカレイ(マガレイ)にしましたが、鯛の切り身でも鱈などでも白身の魚でしたらなんでもかまいませんのでお好みで素材はお選びください。ただし、 できるだけ新しい物 の方がよいかと思います。)


(材料) 2人分

エテカレイ1匹分
焼き豆腐半丁
(調味料)
300cc
80cc
砂糖大さじ 2杯
みりん大さじ 2杯
濃口醤油大さじ 3杯


(調理手順)
  1. まず、エテカレイは頭がついているものは切り落とし、内臓も取り除きます。
    卵巣が入っている場合はそれはそのままにしておいてください、一緒に焚きあげますと美味でございます。
    そしてカレイを二等分に頭と尻尾という感じで切り分けます。

  2. 次に鍋に湯を沸かしますができれば90度ぐらいの沸騰する前ぐらいのお湯を用意します。
    (沸騰している所に魚をつけますと皮が剥がれる恐れがあります。)
    そのお湯にカレイを入れて霜降りを行います。
    これは臭みを消す作業ですが、新鮮な素材ならば必要ありません。
    今回は一応霜降りを行います。そして丁寧に身をくずさないよう水で洗い、その後水気を取っておきます。

  3. 次に調味料欄の量をぴっちり計量し、大きめの鍋にいれ、まず沸騰させます。
    (魚を入れて沸騰させると魚の生臭味が出るので(右図参照)沸騰してきましたら弱火にし、火傷しないように鍋にカレイ、焼き豆腐半丁を4等分に切ったものを上下に重ならないよう並べます。
    そして中火のやや強い目に火力をもどします。

  4. アルミホイルを図2のように真ん中に穴をあけ、落し蓋の代わりに使います。
    使う前に裏面、つまり魚に触れる方を水でぬらしておきます。そうしますと皮がひっついたりしません。
    そして中火の強い目のまま約5分、その後中火の弱い目にして約10分煮ます。

  5. 上記の約15分ほどが経ちますと煮汁が少なくなってきていますので鍋の様子を見ます。
    その後、煮あがるまでは鍋から目を離さず焦げないよう気をつけ、煮汁がほんとに少なくなりやや粘性を帯びだしたら火を消してください。
    器に崩さないよう盛り付けて出来上がりです。



ワンポイント 煮付けのコツのコツ?

[5]で「煮あがるまでは鍋から目を離さず焦げないよう気をつけ・・・」という箇所ですが、私はその時に
「美味しくなーれ、美味しくなーれ」
とやさしく語りかけます。

それでもやや味がのらない時は
「美味(うま)なれ言うとんじゃぁー」
と怒やしつけると煮付けが ビクッ! とするのか、なんとなく味が引き締まる感じがします。

(求道経験談)



五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫