7月の素材 「新ごぼう」




〜豚と新ごんぼの玉子とじ〜

いよいよ7月となり本格的な夏を迎える事となりました。
今月の素材は 「新ごぼう」
ごぼうは年中出回る野菜ですが特に旬は秋から冬、そして6月の中頃から7月中にかけて出回る新ごぼうは繊維が細かく、色が白く そして柔らかいので、料理屋では 柳川鍋のささがきごぼう にと珍重いたします。
あっそうそう実はごぼう、京都では 「ごんぼ」 とか 「ごんぼさん」 と言いますが、外国では栽培されていない、つまり外国の方は食べない野菜で日本固有の品種なんです。
そのごんぼさんを使っておうちでも簡単に柳川風の鍋を作っていただきたく、今回は豚をつかってレッツチャレンジ!

先月号からついに当メルマガの発行部数が1万を越えたということで ゛快挙゛ と拍手喝采しております スタッフ同士ですが
いやいやなんのその1万はあくまで通過点に過ぎず、もっと大きな目標に向かい頑張りますので今後ともよろしくお願い致します。

しかしー、この料理コーナーちゃんと読んでもらってるのか?
はたまた、誰か料理作ってみて下さったのか、とんとわかりません。
誰もメールくれへんし、さみしい感じ!
ということでお便り催促しておりまーす。

あっそうそう皆様のお陰でということでふと思い出しました。
10数年前のとある料亭の洗い場に おこぜのおばちゃん と言われる世にも恐ろしい形相の、そして誰一人として笑った顔を見たことがないというおばあさんがいらっしゃいました。

そう・・・お歳は恐らく80を過ぎておられ、まさしくおばあさん。
器を洗い続け50有余年という話をちらっと聞いた記憶がありました。
その方調理場の男の子が不遜な行動、言葉づかいをすると
「こらぁわれー、そんなことで将来どないすんねん」
と噛み付かれた人幾知れず。

幸いにも私は噛み付かれることは無かったのですが、じぃーっと心の奥を覗くようにおでこのあたりを照準に見つめられると、あぶら汗が出そうになった事は幾知れず。
できるだけ怒らさないようにと保身の念が働き、いつも礼儀正しく笑顔を添えて。

そんな私が今日調理場を上がる(辞める)という日、それぞれお世話になった方にお礼の挨拶をしていると、 おこぜのおばちゃん 曰く
「ちょっとこっち来ぃや」 と物陰へ。
最後になってなんかお叱りを受けるのかと、さむーくなっていると、
「あんたな、よう頑張ってたな。家帰ってもちゃんと料理の勉強せなあかんよ。これでな料理の本買いや。きっと一流の料理人になるんえ」
と一万円分の図書券を手渡されました。
勝手に人の生活のことに考えを及ぼす事は大変失礼で不遜な事と思いますが、50有余年、ここで器を洗い恐らく子を育て、また送り出し、そして老後の糧をつむぎだしているおばあさんを考えますと一万円という額がどれほどありがたいことか、そして噛み付かれた幾人の人たちにも 「将来人の上に立って人を使う立場になったときのことを考えよ」 と教育してくれてたのでは・・・という想いがよぎり、ふいにポロッと涙がこぼれてしまいました。

すると 「あらまぁ、男前がだいなしやがな」
と、初めて おこぜのおばちゃん の笑った顔を見ました。

それは少女がはにかんでるような笑顔。
決して自分ひとりで生きているのでなく、皆に見守っていただいているのだとつくづく感じ入りました。

つまるところこのメールマガジンもきっと皆様に温かい目で読んで戴いているのだとそのように想います。
だから・・・どしどし・・・お便り・・・ください・・・ね!
  (言いにくい、2回目やし)

ところで、おこぜのおばちゃんご存命ならばもう100歳近く。
おばちゃんにもらった図書券で買った本が悪かったのか、私は未だに 一流の料理人 にはなっておらず、どうしたもんでしょうかね?


えっ?本のせいにする性根が悪い?
・・・ごもっとも!





用意する材料 (2人分)
・豚ローススライス200g
・新ごぼう1本
・玉子2個
(用意する調味料)
・出汁200cc
・酒50cc
・みりん大さじ 2杯
・淡口醤油大さじ 2杯
・砂糖小さじ 2杯
・味の素少々
・粉山椒少々

(調理法)
  1. まずごぼうを軽くたわしで洗い、右図のように包丁でささがきごぼうを作ります。

    できるだけ薄く削るように頑張ってみてください。
    そして出来上がったささがきごぼうは水にさらし、アク抜きをしてください。

  2. 調味料欄の粉山椒以外をすべて土鍋、または鍋に入れてそこに[1]のごぼうを両手で”ぎゅっ”と、おにぎりを握るようにして水分を切り、一緒に入れて火にかけます。

  3. 次に豚ロースのスライスを適当な大きさに切り鍋の中に入れます。
    出汁が沸騰しだしたら弱火にし、豚肉に火が通るまで煮ます。
    およそ沸騰してから3分ほどです。

  4. 最後にとき玉子を鍋のふちから全体にわたるように回しながらかけます。
    火が通り過ぎますと固くなりますので、半熟ちょいで火を止めてください。

  5. 粉山椒をたっぷりふりかけてお召し上がりください。



それでは夏バテしないよう
美味しいもの(メルマガ料理)食べて

ついでにお便り書いて
(3回目は言いやすい)

・・・おきばりやす!


五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫