旬の食材を戴く事は確かに最高の贅沢だと思います。
しかしながら、いつもいつもそのようなものばかり食べているわけにもいかず、多少好みでないものでも栄養学上ちゃんと摂取することが、健康の秘訣ではないでしょうか。
わたくし料理人になる前やなってからの数年というものは、器が小さいというのか、気が練れてないというのか、事あるごとに「こんなもん食えるか」とよく思って食べ残したり、箸をつけなかったり、「本当はこれこれこうするのが正当な作り方や」とか言ってみたりすることが多々あったんですけど、結婚し、子供が出来てからのことですが、テレビで発展途上国の貧しい国の国民が飢えで何分かにひとり餓死しているという報道を目にしました。
小さな子供たちが死んでいく姿を見て、なんと自分は「あほなこと」をしていたのだろうと反省致しました。
わたくしが「まずいし食べれへん」と言ったそのまずいものでさえ、きっとその子供たちは食べたくて食べたくて仕方なかったのに食べられなくて、おそらく生まれてから一度もお腹いっぱいに食べたことも無く死んでいくのだろうなぁと思うと、今までの己の愚行と驕りに怒りさえ感じました。
それからは努めて何でも出されたものは全部食べるようにし、食べられる物が目の前にあるありがたさを感謝するようにしています。
料理人はまずいものを食べると舌が腐ると言いますが、それはその人の甘さだと思います。
プロなら味の記憶ぐらい一度食べたら忘れないという真剣さで、神経を研ぎ澄ましていればよいのです。
いつも美食していないと味覚が鈍るというのは、電卓がなかったら計算できないと言っているのと同じことです(全然違う?かな?)。
ですから子供達にも
「食べ残しはダメ!出されたものは最後まで食べなさい」
と口を酸っぱくして言い聞かせています。
また求道料理人として最高の味覚を探求しつつも決して無駄な事はしない
「エコ料理人」
をも目指しておる今日この頃です。
しかしー、ここ数年流行のホテルなどのバイキングを利用しますと、料理がなくなりかけるとすぐに新しい料理が運ばれてきます。
すると子供は
「お父さん、まだお皿に残ってるのに持って行かはったよ。それに食べても食べてもなくならへん場合はどうすんの?」
と聞きます。
「うーん???」
エコ料理人
曰く
「バイキングは教育上よろしくない」