12月の料理 「鯛かぶら」


季節の逸品 

〜鯛かぶら〜

 いよいよ師走となり、気ばかりがせく時節となりました。

 今回はきょうとウェルカムサイト内の「よもやま話」と連動した形で鯛を包丁したいと思います。

 鯛のうんちくうんぬんはよもやま話をご参照していただくとして、「鯛かぶら」のご紹介です。

 鯛とかぶらの鍋、これは京都独特の取り合わせで、かぶらについても今年の2月号でご紹介しました。



 包丁のお時間の前に求道料理人清水が、今回は物を 「湯がく」 についてお話させていただきます。

 お鍋には色々なお鍋がございますが、次回皆様お鍋を買われるなら、出来るだけ分厚いお鍋をお買い求めください。
物の煮え方が全然違います。

 特に今回のかぶらなどは湯がき方によって仕上がりが雲泥の差となります。ぺらぺらのお鍋で だぁー っとぐらぐら湯がきますと確かに早く湯がけますが、表面部分と中心部分の熱の伝わり方にむらが出来るため、筋が残ったり、さくさくっとした仕上がりになってしまいます。

 厚みのある鍋で、 (あっそうそう土鍋なんかで湯がかれると最高です) じっくりと中火で湯がきますと、中まで均一に、そして口の中に入れますと溶けるような食感に仕上がります。

 熱いお風呂に入りますとすぐに温かくなりますが、芯まで温まっていないので湯冷めしやすいですよね。逆に少しぬるめのお風呂に長く浸かりますと、上がってからもぽかぽかとしています。それと同じような理屈で、物を湯がく場合はそのものの中心部がしっかり湯がけなければいけません。

 分厚い鍋ほど鍋内のお湯の熱対流が起こりにくく、温度のむらが起こりにくいので物を湯がくにはぴったりのお鍋と言えます。

 むかーし、わたくし修行中よく料理長に
「そんなぺらぺらの鍋でもの湯がいたらあかん。
物知らず 下手くそ 素人 バイト君

などとけなされたものですが、その後にちゃんと理に叶った調理法の説明をしていただき、 「ほーーっ」 とよく感心していました。

 わたくし修行を終え、自店に帰る際に
「表面の仕事を覚えるのは年数が経てば誰でも覚えられること。調理の理を知らなあかんよ。これからも無駄に時間を過ごさず、常に最高というのではなく、最善の料理を作るよう手間を惜しまぬようにしなさい」
と言っていただき、ハタと目が醒めその日から 求道料理人 への道を歩みはじめた?わけです。

 ですからかぶらを湯がいている時も 「かぶら君、ちょっとお湯ぬるい?えっ熱いの!」 とあわてて火を弱くする、という無駄な時間を過ごしている清水でした。




「鯛かぶら鍋」

用意する材料 2人分

鯛の頭 1尾分(適当な大きさに切り分けたものをご購入ください)
かぶら  1/4
刻み柚 少々、またはすだち1個

出汁割合

出汁(粉末出汁の素でもよい) 700cc
淡口醤油 50cc
みりん 50cc
50cc
味の素 少々

              
調理手順


1

 まず鯛の頭の切り身を沸騰したお湯につけ、15秒ほど湯がきます。

 そしてすぐに水に落とし荒熱をとり除いたら、うろこを丁寧に取り除いてください。

  ※一枚でもうろこが残っていますとだいなしですので慎重に。


2

 次にかぶらの皮を厚く剥き、適当な大きさ(縦3cm×横2cm×高さ2cm)に切り分け、それぞれの辺の角を少し切り取り(面取りするということ)煮崩れしにくくします。

 そして分厚い鍋でたっぷりの水から湯がきます。

 沸騰した後は弱火にし、じっくりゆっくり湯がいてください。


3

 かぶらに爪楊枝がすぅーっと抵抗無く突き刺さるように湯がけたら水に落とし、フキンなどで水気を取っておきます。


4

 出汁割合の材料を土鍋に入れ、火にかけます。

 次に鯛とかぶらを出汁の中に入れ、沸騰させます。

 沸騰しましたら弱火にし、じっくり10分ほどコトコトと煮ます。

 あくが出たら、取り除いてください。


5

 お好みで仕上がりに柚の刻んだものか、すだちを搾ってお召し上がりください。



鯛とかぶらがこんなにも合うものなのかと驚かれること必定です。

是非、体の芯から温まってください。

五条料理飲食業組合  割烹三栄 若主人 清水敏夫