あかりの言葉

月の光に浮かぶ日本の心

  祗園は夜の街です。物語を彩った人々や詩歌によまれた数多くの風情も、夜のしじまの内から生命を与えられてまいりました。人々の感情や、自然の風物を陰影深く映し出し、栄枯の移ろいを数百年にわたって演出してきたのも夜の “あかり” という脇役があったからです。
  この世の明るさは陽に勝るものはなく、 夜の闇を救う光は月以上のものはありません。
  しかし人々が住まいという場所に在る時は、“あかり”が陽や月の代役をつとめます。陽の明るさを遮り、月のあかりを恥じる人の住まいにあって、灯火も生活の重要な部分を担ってまいりました。
月に学ぶ
  私は、明るさの単位を月照度という言葉で表現しております。空気が澄んでいる満月の夜、月の光だけで本が読める明るさが月照度1です。月照度2は、月の三分欠けに等しい明るさ。 月照度3は、半月の明るさ、部屋で人の顔が1番美しく浮かびあがります。月照度4は、三日月の明るさです。人の顔もおぼろげで見わけにくくはありますが、影が美しく冴えます。月照度5は、月白明かりであります。部屋ではようやく物の形が見きわめられる程度の明るさです。
  このように “あかり” を月と比較して部屋の雰囲気の細部に陰影を与え、昼と夜のただずまいを大胆に変えることも可能な技術の範囲です。欧米ではライティングとかライトアップとか申しておりますが、日本では行燈の昔から、光のつくる影の素晴らしさを充分に利用しております。
私どもの仕事
  自然の産物を主要な材として使用しています。寒冷地に育つ為、杉独特の柾目が最も美しい秋田杉。腰が強く丈夫な土佐和紙。錆のこない真鍮。ゴマ、白、虎、様々な種類の竹。自然の恵みに再び永遠の生命をあたえます。 極限まで無駄を省きつつ、器具としての強さを失わぬように物の持つ存在感を一番きれいに表現したい。和紙を張り替えることにより、末永く使い続けて頂く事が出来ます。手作業により一つ一つ作っておりますので、お客様と相談しながらオリジナルの照明器具を創ることも出来ます。
  あかりが月の光より優れているとすれば、常時同じ照度を保持できる点でしょう。月の光は今夜を過ぎれば同じ光を同じ条件では与えてはくれない。過ぎ行く時のはかなさです。人が同じ光を同じ条件で受けれるようになってからは、むしろ人の心は歌心を失ったかもしれません。
  大胆な推論ですが、去り行くもの、それが時であろうと、人であろうと、また光であろうと、心に留めおく些細な事柄を大切にしてこそ、情緒が湧いたと考えることはできないでしょうか。
  一期一会を茶の道では説いております。その意味での“あかり”に、私どもはできうる限りの「心」を与える努力を傾けております。かなわぬ夢ではありますが・・・。
当店のホームページもご覧下さい。
三浦照明株式会社

京都市東山区祇園町北側284
TEL:075-561-2816
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