「映画のまち新京極」   新京極 左り馬」 井上恭宏
            
     
          “芸能おたくになってしまった化粧品屋のおやじ” の 「よもやま話」 お聞き下さい。
京都の新京極
京都の新京極と言えば、東京の浅草仲見世と並ぶ歴史ある商店街であり、明治5年の誕生から現在まで、「繁華街」として栄えてきました。

とくに、明治30年代に新京極通の“東向座”に於いて行われた、稲畑勝太郎による活動写真の試写会(神戸に次いで日本で最古の映写実績)以降今日まで「映画のまち新京極」は、新京極の変わらぬシンボルのひとつです。
「映画のまち新京極」の地図
私が生まれたのは
私が生まれたのは昭和30年ですので、ちょうど映画の全盛時代です。映画館の前が遊び場でした。
“京都花月劇場”前で遊ぶ 井上恭宏 2歳 現在NHKで放映中の「オードリー」の舞台になっている東映の時代劇は、店の隣りの“京都花月劇場”(現パッサージオ)が私の子供時代には東映の封切館のため、すべて顔パスで見ました。金曜日の夜にポスターとスチールが貼り変わるのを見るのが、子供の頃何より楽しみでした。

やさしかった当時のモギリ(※1)のお姉さんが、今でもお元気で新京極の映画館で働いておられるのは、うれしい限りです。

          ※1 受付で切符を切ってくれる人
左り馬の「あぶら取紙」
左り馬の「あぶら取紙」の表紙のマークは、歌舞伎十八番のひとつ「暫(しばらく)」の隈取りをモチーフとしておりますが、何故このような歌舞伎を素材に取り上げているかといいますと、新京極は映画だけでなく、“見世物〜芝居〜寄席〜実演”のまちとしても栄え、芝居(歌舞伎)も身近に存在していたからです。現在の“松竹座”の場所にあった“明治座”が花形歌舞伎のメッカだったそうです。 「左り馬」の“あぶら取紙”

私の祖母は、新京極で生まれ(明治43年)育ち、今も健在ですが、娘時代には歌舞伎の他に文楽なども盛んに行われていたと聞いております。

「旗本退屈男まかり通る」
「旗本退屈男まかり通る」という自伝によりますと、市川右太衛門御大も関西歌舞伎の一座で、現在の“京極東宝”の場所にあった“三友劇場”を“常打ち小屋”として活躍。「勧進帳」の弁慶役を大正13年に演じたとあります。

当時は、大歌舞伎以外にも、実力はあるが門閥に恵まれない役者衆の芝居が、それこそ身近に気楽に新京極界隈で観られたのでしょう。
アチャコ・エンタツ 実演の時代になってからですが、例えば“京都座”のアチャコ・エンタツの合同公演における観客の熱狂ぶりなど、昭和20年代の新京極については、祇園の老舗バー「いそむら」のマスターに聞くとよくわかります。
“平成中村座”で「法界坊」
“平成中村座”で「法界坊」という芝居が11月にありました。隅田川のほとりの公園の一角に仮設劇場を建て、1ヶ月限りの歌舞伎公演を行うのです。この企画の仕掛け人中村勘九郎は、江戸時代の小屋(劇場)の雰囲気の中で、江戸の遊び心を再現したいとの事。これは何を置いても行かねばと思い、早速行って来ました。 平成中村座
平成中村座 芝居は、遊び過ぎの感もありますが、お客様に歌舞伎という古典芸能を平成の芸能として楽しんでもらおうという、勘九郎の意気込みが痛いほど伝わって来ました。役者が客席から近い小屋での芝居は、それこそ昔むかし新京極で観る歌舞伎はこんな感じだったのかなと思わせる雰囲気でした。
客席には、座布団敷きのスペースもあり、休憩時のお弁当タイムはさながら遠足のようでしたが、決して懐古趣味ではなく、もっと突き抜けた芸能本来の持つおおらかさのようなものを皆で(もちろん私も)楽しんでいるように感じ、楽しい時を過ごしました。 平成中村座
“京都座”跡にシネコン(※2)
“京都座”跡のシネコン工事現場
※2 シネマコンプレックス(複合映画施設)
「映画のまち新京極」にうれしいニュースがあります。

“京都座”跡にシネコン(※2)が来年12月に出来る(7館)予定で、現在工事中です。(新京極通三条下る東側)
“京都座”は、昭和38年3月まであったようですが、私の記憶には、“長崎屋”と“ボウリング場”に変わる前の劇場の姿はありません。

昭和15年頃には、すでに映画館になっていたとはいえ、写真に残るその姿はまるで“南座”のような劇場の持つたたずまいがあります。
京都座
跡地に碑が残っても、やがてその碑を訪ねる人も少なくなります。
「映画のまち新京極」が過去のものになることなく、今を生きる人達にとってのフレーズ「京極に映画観にいこか!」につながる事は、新京極で商いするものにとってこんなうれしい事はありません。

最後に、会社発祥の地である新京極に新しい息吹きを与える決断をした松竹株式会社に感謝申し上げ、生まれ育った環境のせいで、すっかり“芸能おたくになってしまった化粧品屋のおやじ”の「よもやま話」を終わります。
 
参考資料
「はたち」 新京極商店街振興組合
「写真集 京の町並み今と昔」 京を語る会
「思い出のプログラム新京極篇」 京を語る会
旗本退屈男まかり通る」 東京新聞出版局
当店ホームページもご覧下さい。
京・あぶら取紙
株式会社 左り馬(ひだりうま)

〒604-8046
京都市中京区新京極通錦小路上ル東側町525
TEL(075)221-2221 FAX(075)211-2346


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